先日、毎月楽しみにしていた『婚マン』という漫画が完結した。せっかくなので記念に感想を書いてみようと思う。この漫画、珍しく男性が主体となった婚活漫画である。
著者の中川学氏は、映像化もされたくも膜下出血闘病漫画「くも漫。」の著者である。
婚マンについてはこちら
参考 婚マン 独りで死ぬのはイヤだ集英社オンライン「くも漫。」についてはこちら
参考 「くも漫。」トーチwebあらすじ
この漫画は著者である中川学氏の婚活の様子を描いたコミックエッセイである、マッチングアプリで出会ったり、合コン形式の婚活イベントに参加したり、リアル知人に告白したり、といった内容が描かれている。合間に著者の独白が含まれる。
ところで、この漫画の特異な点といえば、編集部主催の『公開お見合い』が行われたことだろう。どういうことかというと、連載元である集英社オンラインがサイトにてお見合い相手を呼びかけたのだ。なんと公開お見合いの様子はWEB記事にもなってるし、漫画でも描かれている。個人的にはこの回が一番面白かった。もしお二人が私のリアル知り合いだったら常に気にかけていただろう。マッチング成立に至ったかどうかは漫画を見るべし!
感想、年収200万の婚活は無謀なのか?
盛大にネタバレが含まれるので、読みたくない人には回れ右をお願いしたい。
今回の漫画では、なんと公開お見合い相手のななさんという女性が結構なお嬢様なのでは?ということが匂わされていた。ななさんから見た中川学氏の印象もとても良いものだったようだ。資産家ゆえの感性なのか、ななさん個人の価値観なのかは不明だが、彼女曰はく「私にとって年収はそんなに関係ないです。生活が沈んだら沈んだで、全然いいんじゃないかなと個人的には思っています。」とも。なので、年収200万での婚活は無謀なのか、というのは人によりけりとしか言えない。
公開お見合いについてはこちら
参考 「年収200万は関係ないです」48歳漫画家のお見合い企画で女性から出た意外な本音「伸びしろがある人が好きなんですよ」集英社オンライン自身の年収を早々に明かしたことはこの漫画の面白さに繋がっていると思う。私はこの漫画にて、結婚相談所に登録するにはそれなりの金額が必要だと知った。相手との出会い方もバリエーションがあり、お金がかかる場合があるのだ。ならば、自身の年収ではこういう婚活が現実的だったという事実を見せることは実直で、それがエッセイという作品のリアルさと面白さを引き立てている。
漫画の本旨には関係ないが、著者の中川学氏は就職氷河期世代であり、教員を退職後漫画家を目指して今に至る。著書も数冊あり、そのうちの何冊かは映像化されている。堅実な人生も夢を追った人生もどちらもそこそこ成功しているのだ。氷河期世代なんて、とてつもなく割を食った世代で生きてるだけで大変なのではと推測している(もしかしたら失礼な思い込みかもしれないので、不快に思う人がいたならばここで謝罪しておく)。この漫画は一見、一般男性のリアリティ溢れる婚活漫画で、何も考えなければ「まあ現実はこんなもんかなー」と流し読みしてしまうかもしれない。しかし、氷河期世代の何割が今普通に生活し、あまつさえ婚活をする心の余裕を持てるのだろうか。そう考えると著者のバイタリティは凄いものがある。作中に登場するななさんもそんなところに惹かれたのではないかと思ったり。
氷河期世代が描いた婚活エッセイと思うと実は泣ける漫画なのかもしれない。
総評、そして次回作に期待すること
ところで著者は旅行エッセイを描くことを希望しているのようだが、私も著者の旅行エッセイを読んでみたい。過去作の『すべりこみ母親孝行』にて母親と釧路へ旅行する回があるのだが、それが面白かったので。
中川氏のエッセイについて思うことが二つある。一つは作者自身のモラルや道徳心の高さだろうか、作風にある種の潔癖さがあり、それゆえ男性のコミックエッセイ作家にありがちなキモさが薄まっている。なので結構女性読者が多いのではと推測している。二つ目は情報の伝え方の上手さである。中川氏のエッセイは総じて情報量が多い、そして一冊完結型である。この情報量をここまでコンパクトにまとめるのはかなりの技量だと思う。実は背景なども細かく書き込んだり写真を使ったりして、作者に無意識に情報が伝わるように工夫している。何がそうさせるのかは分からないが、かなり読ませる技術がある。元教員ゆえの使え方の工夫だろうか、それとも著者の知性だろうか。なぞだ。
個人的にはグルメエッセイも読んでみたかったりするので次回作には大いに期待している。
↓好きなやつ。北海道の人はやっぱりグルメだ。
参考 孤独なおじさんのひとり活動エッセイ漫画「久しぶりのふたりクリスマス🎄」note

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